夜景館スタッフ日誌 香月 綾女/司書 忍者ブログ
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 明後日は友人の結婚式なので、休みである今日、ドレスやアクセサリーなど細々と準備中の香月です。
 昔別の友人の結婚式で同じドレスを着た時、ファスナーが上げきれないくらいピチピチだったのが、今日着てみたらすんなり。
 きゃー、自分痩せてるー♪と喜んだのもつかの間、はたと気付きました。

 痩せたんじゃない、肉が下に垂れてきていると。
 鏡で見てみれば、下腹やお尻の下の方が垂れ下がっているのが一目瞭然。

 いやああぁあああぁっ!!

 補正下着というおばさんアイテムの代名詞的単語が脳裏をよぎった香月20+α歳の夏でした(滝涙)。

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 ・・・嘘ですゴメンナサイ。
 前日の話の、更に続きです。どうぞご覧下さいませ↓



 ひと騒動あった雨の夜から3日後――

『一体どういう事よ似非最高僧!?あの悟能もどきは何なの!?てゆーか貴方今まで何所ほっつき歩いてたのよ!?貴方が役目をきちんと果たさないから、本物の悟能が頭の固い馬鹿坊主達に疑われる破目になるんじゃないのっ!!』
(・・・煩ぇ喚くな静かにしてろ)

 慶雲院が所有する修行用の施設。
 その一室で、花喃は三蔵に捲くし立てるように怒鳴っていた。
 事の始まり――といっても、花喃にとっての、だが――は、昨日の昼頃。
 突然悟浄宅に押し掛けて来た大人数の僧侶達が、八戒を連行しようとしたのだ。
 曰く『大量虐殺の嫌疑が掛かっている』と。
 その場は追いかけて来た悟空が三蔵の言葉を盾にしたことで、僧侶達は一旦引き下がったのだが。
 『むしろ自分が寺院にいる間に大量虐殺が起これば、確固たるアリバイが築ける』という考えの下、同居人や雨の夜に助けた白い生き物同伴で、八戒は自ら寺院に逗留を申し出たのだ。
 そして日付が変わったばかりの現在――

『しかもあのおチビちゃんや馬鹿坊主達の話からしたら何、貴方悟能に嫌疑が掛かっているのを知っててそれを否定しなかったわけ?ふざけんのもいい加減になさいよ!ちょっと貴方が知ってる事を周りに伝えれば、悟能があんな言い方されたり、打ちひしがれたりすることもなかったのよ!?』
(・・・『あんな言い方』?)
『何でも、大量虐殺で生き残った子供が、その悟能もどきが私の名前を呟くのを聞いたそうよ。もちろん、その子は意味なんて解らないでね。
 でも馬鹿坊主達からすれば、これ以上にないってくらい決定的なネタになった。あの奉安ってジジィ、完全に悟能を犯人扱いして、「明日が楽しみだ」なんて言うのよ?
 それに、それを聞いた悟能も自分の記憶を信じなくなって、自分がやったかも知れない、なんて言い出すし・・・全部、貴方の怠慢ですからね!?』
(何でそれが俺の怠慢になるんだ。自分の記憶を信じられないのは、奴自身の責任だ。
 言っとくが俺は否定はしなかったが、肯定もしてねぇ。むしろ奴との関連を端から考えに入れていなかったのが、ある情報から一つの可能性が出てきた、だから奴を連れて来るのは3日後、と言っておいたんだがな)
『・・・何よ、それ』
(何がだ。猿じゃねぇんだ、どの言葉に掛かるのかはっきりさせろ)
『言ってしまえば全部なんだけど。まずは、貴方は悟能を犯人だとは全く考えてなかったのね?』
(貴様が証明してるだろうが。本当に奴が犯人なら、最初の事件が起こった時点で貴様は俺のとこまですっ飛んで来ている。違うか?)
『違いないわね。残念ながら、公的なアリバイの証人にはなれないけど。
 じゃあその次。ある情報って、あの悟能もどきに関係する事よね?それって何なの?』
(面倒臭ぇ、もうすぐ同じ質問をする奴等がぞろぞろ集まって来るから、それまで待っとけ)
『信じらんない。やっぱ似非最高僧ね・・・まあいいわ。
 じゃあ最後に、どうして3日後に悟能を連行する事になってたの?』
(今回の件で、必要なブツを調達するために留守にしていた。それが今日までの3日間だ。
 そしてこの件にカタをつけるべきなのは、俺ではない。それが奴の連行を認めた理由だ)
『それって・・・』

 花喃の言葉が疑問の形を作る前に、

「っ痛ぇ――――っ!!」

 同じ部屋にいた悟空が絶叫と共に飛び起きた。
 とはいえ、それは朝の清々しい目覚めとは程遠いものだ。
 何せ強烈な閃光が目を直撃したことで気を失っていたのだから。
 恐らく今も、その刺激で眼球に強い痛みを感じていることだろう。

「煩ぇ喚くな静かにしてろ」
(・・・貴方同じ台詞しか言えないの?っていうか私とあのおチビちゃんと同列扱い?)
「ンな事言ったって、痛ぇモンは痛ぇんだって!つーかマジ痛ぇ!」


 スパ――――ンッ


「これで目の痛みは気にならん」
「・・・・・・(酷ぇ)・・・」

 ハリセンで撃沈させられた悟空に、花喃がご愁傷様、と呟くが、本人には聞こえる由もなかった。
 その後も悟空の『痛い』コールは続いたが、程なくして悟空同様閃光で気を失っていた八戒と、それに付き添っていた悟浄が部屋を訪れ、花喃を含めた――但しそれを知るのは三蔵だけだが――4人は、三蔵からあの『悟能もどき』の正体を聞くに至った。






 その翌日。
 花喃は、次元の狭間で、ゆらゆらとたゆたっていた。
 ここは現世の時間や空間の法則性から解き放たれた場所だ。
 普段八戒が就寝した後や、三蔵に急を知らせる時などは、この場所に一度潜ることで、自分の望む時と場所へと移動することが出来る。
 もちろんこの空間を利用するのは自分一人ではなく、古今東西あらゆる場所で命を落とした者達が漂っている。
 といってもヒトの形を成している者は殆どおらず、やや濃い目の煙のような状態の者が多い。
 彼らの殆どは、特に現世に未練があってここにいるわけではなく、次の輪廻の輪に入る準備中といったところだ。
 ごく稀に、花喃のように強い想いから留まっている者もいるが、そんな事は花喃にはどうでもよかった。
 今の花喃の中を占めているのは、唯一人の存在。
 その人物は今、『過去の自分』と対峙すべく、呪わしい場所へ向かっている。

(貴様は来るな。魔鏡が現世の者でない存在にどう影響するか判らない以上、面倒事は増やしたくねぇ)

 出発前に自分に向けられたその言葉は、半分は本音で、半分は多分気遣いだ。
 ――あの場所は、あの場所にいた者達は、自分がこの世に在らざる者となった全ての元凶なのだから。
 もちろん八戒だって好き好んで行きたくはないだろうが、この騒動に決着をつける義務がある以上、それは仕方がない。
 あの悟能もどきは、自分達をこのような目に遭わせた連中に対する負の念が、かつて百眼魔王の城に納められ、魔王の一族が全滅した後流出したという魔鏡の力で具現化したものだ。
 あの時、『悟能』は、本当に全てを憎み、呪っていたのだろう。
 全てを抹殺すべく、ヒトであることも棄てるくらいに――
 そこまで考えると、思考に終止符を打つようなため息を一つ吐き、花喃は『外』へ向かった。






 ジープで腕を組みながら眠っていた三蔵は、気配に気付き、片目を開けた。
 案の定、そこには花喃がふわふわと宙に浮いていた。
 三蔵が目を覚ました事は気付いているだろうが、それには構わず視線は運転席の八戒に注がれている。
 ――が、当の本人は様々な疲労もあってか、ぐっすりと眠っているようだ。

『・・・ねぇ似非最高僧、悟能が私の事判らないのって、悟能が妖怪になった事と関係あるのかしら?』
(・・・・・・)

 いつになくしおらしい表情をしていると思えば、そんな事を考えていたとは。
 確かに、同じ胎内で育った双子であるにも拘らず、今の花喃は八戒には認識出来ない。
 そのために、八戒が暗い思念に捕らわれる度に三蔵が巻き込まれる形となっていたのだが、それを不服とする気持ちは三蔵よりも花喃の方が大きいらしい。
 それもそうだろう、幼少時に生き別れた後再開した時は何の疑問も持たずに惹かれあった相手が、今は全く自分の存在に気付かないのだから。
 そもそも、人間が妖怪に変化する事自体、三蔵は半信半疑だったが、隣に眠る人物がそれを実現してしまった。
 身体能力などの変化を本人から聞く限り、やはり細胞単位で人間の頃とは異なるものになっているようだが、それが双児の片割れ(の、霊)を認識出来ない理由になり得るかといえば――

(阿呆らしい。大体、男と女の双子ってんなら二卵性だろうが、それなら普通の姉弟と何ら変わらん筈だ。兄弟姉妹の霊が認識出来るってんなら、この世は霊能者だらけだ。違うか?
 こいつが貴様を認識出来んのは、単にこいつのチューニング不足だ。俺に文句言うんじゃねぇ)
『・・・それって喜ぶべきなのかしら?どうにも腹が立つんだけど』
(知るか。俺は眠いんだ、今夜はここで過ごすつもりだから、夜が明けてから出直して来い)

 そう言うと完全に目を閉じ、本当に寝入ってしまった。

『全く・・・本っ当に似非最高僧なんだから・・・』

 でも――自分の片割れが言った通り、確かに信頼に足る人物だ。
 そう考え、再度運転席の人物の顔を覗き込んだ。
 今回の件で、少しは憑き物が落ちたらしい想い人だが、まだ不安要素が無くなったとは言い難い。
 この調子だと、まだまだ現世(ここ)に留まる必要がありそうだ。
 クスリ、と笑うと、花喃は再び次元の狭間へと消えていった――






 八戒が過去の自分と決別したことで花喃が成仏すると考えていた三蔵は、当てが外れて眉間の皺を増やすことになる。
 他方、八戒は車に変身する白い竜をジープと名付けて飼い始め、少しずつではあるが前を向いて進み出した。
 封印対象だったジープを、尤もらしい理由で八戒の手元に置く事を独断で決定付けたのは、他ならぬ三蔵だ。
 『殺す』事がアイデンティティであった彼が『生かす』事を選んだ、それは稀有な出来事。



 どっとはらい。


 追記:まだ居座るんですか花喃姉様(爆)。
 最初の話を書いた時は、悟能が『八戒』となって寺院を出たところで終了、と思ったら姉様暴走(笑)。そこでゴール=姉様の成仏を『ある時点』に設定、現在はそこへ向かってひた走っている最中なのです。
 ちなみに小説『鏡花水月』をご存知なくてもメインは花喃姉様vs.三蔵なので読むのに支障はないと思われますが、分かりづらい点がある場合、コメントいただければ幸いです。

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・・・7は花喃姉様の7です。パチスロじゃありません(苦笑)。
 精神的に浮上した途端、『書きたい内容』が形を成してきました。
 3ヶ月前に突発的に思い付いた話がいつの間にか続き物になった頃から、この話は盛り込みたいと思っていたのです。
 一応間が空いている事を考慮して、詳細説明は入れていますが、宜しければこちらとかこちら、更にこちらなどを先にご覧いただければ幸いかと。
 既読の方は、先へお進み下さいませ↓


 夕刻から降り始めた雨は、見る間に豪雨へとその激しさを増していく。
 そうやってうつろう外の天気を余所に、慶雲院統括責任者は今日も山積みの書類と格闘していた。
 そこへ、

『似非最高僧!早く来てちょうだい!』
(誰が似非最高僧だ!ってかいきなり湧き出て来んな!!)

 こめかみに青筋を浮かび上がらせて睨み付けるその視線の先。
 ふわりと揺れる三つ編みの下げ髪、ふわりと揺れるスカートの――ふわりと宙に浮く女性。
 実感の無い姿形ながら、その表情だけは寺院の僧侶達よりも遥かに生気に満ちている――ように、見える。
 『ように』と強調する理由は、

『いきなり湧き出て来んなって言ったって、私にどうしろって言うの?門番に取り次いでもらえとでも?出来るわけないじゃないそんな事。
 大体この体じゃノックだって出来ないんだから、目の前に「出た」方が早いじゃないの』
(・・・体は無くなっても、口は減らんのか)
『貴方と会話しているのは、霊魂に刻まれた思念ですからね、魂が輪廻の輪に入ってしまわない限り、残存するのよ』
(僧侶に説法とは、イイ度胸してんじゃねぇか)
『あら、机上の空論より実体験を話している方が、遥かに信頼性が高いんじゃなくって?』

 そう。
 何を隠そう、彼女は生身の人間ではない、いわゆる死者の霊なのだ。
 腐っても僧侶達の頂点に君臨する三蔵が、彼女を成仏させないのは、

『ああもう、こっちは急いでいるっていうのに、話が逸れちゃったじゃないの。
 悟能が拙いことになってるわ。早く来てちょうだい、急いで!』
「・・・チッ」

 彼女の真剣な声音に、事の重大さを感じ取った三蔵は、舌打ちながら腰を上げた。
 彼女が言うところの『悟能』――現在は名を改め猪八戒。
 かつて拉致された想い人を奪取する為に、千の妖怪をその手で葬った大量虐殺犯であるが、現在は新たな名を与えられ、生きて罪を償うべく、三蔵の監督下にて社会復帰をしようとしている。
 だが――

『やっぱり雨の日は傷も疼くみたいだし、特に雨の夜は、思考が凄く下向きになっているの。
 状況が似た「あの日」を思い出すんじゃないかしら』
(手間を掛けさせやがる・・・)

 その精神が通常の生活に耐えられる程安定したとはいえず、ともすれば崩壊の側へ強く傾くこともある。
 慶雲院にて拘留されていた頃と違って市井にて生活する現在、精神状態の悪化は、周囲を危険に晒しかねない。
 監督責任者である三蔵にとって監督対象に問題を起こされると厄介である為、彼女を監視員として彼の傍に常駐させている――というよりは、監視員として務める事を名目に、彼女が現世に居座る事を黙認しているのだ。
 というのも、彼女――名を猪花喃という――こそが、かつて猪悟能が大量殺戮を行った原因である想い人であり双生の姉でもある人物だからである。

(あの子がある程度私の事に折り合いをつけて、気持ちの整理が出来た辺りでちゃんと成仏するから)

 そう言って、未だ精神状態に波のある想い人を見守っていて、自傷や自殺未遂の傾向が見られるようになると、こうして三蔵を呼び出すのだ。
 何故か双子の弟にすら見えないその姿や声が、三蔵にのみ捉えることが出来るからなのだが、その点は三蔵が大いに不服とするところである。

(ったく、本人に貴様が見えてりゃ、俺がわざわざ出向くまでもないんだよ。
 何で俺が貴様みたいな女と波長が合わなきゃなんねぇんだ)
『そんなの私が聞きたいわよ。ほら乗合馬車があるわ、早くあれに乗んなさい!』

 彼女自身は既にこの世の理から開放されている存在であるため、三蔵の下へは次元を超えて一瞬で到達出来るのだが、三蔵は生身の人間であるため、当然八戒の下へ行くにはそれなりに時間が掛かる。
 高飛車に言われて額に今日何度目か判らない青筋を立てつつ、乗合馬車と徒歩で、林の中の一軒家に辿り着いた。
 そこには、

「あれ、どしたの?」

 ――余りにのほほんとした口調に、今までの苛立ち全てを目の前の赤毛の男にぶつけたくなった。
 が、今この男を伸したところで事態は解決しないので、辛うじて踏みとどまり、代わりにドスの効いた声で聞いた。

「・・・奴はどうした」
「あー・・・」

 歯切れの悪い口調で、それでもぽつぽつと語る内容から、八戒が雨を見ながら放心していた事、そして止めるのも聞かず何処へともなく出掛けてしまった事を、三蔵は知った。

「俺も少し前から雨の日はヤバいってのは分かってたのよ。だからこうして町から戻って来たんだけどさ」
「そんで出て行くのを引き止められなけりゃ、意味ねぇだろうが」
「いやまあ、それはそうなんだけど。てゆーか何つーの?『近付くな』オーラ倍増だし、無理だっての。
 ・・・それによ、毎回雨が降る度に引き止めてても、本人の為にならないかも知んねぇじゃん。
 本当に立ち直らせようって思うんなら、ちょい距離を置いて様子を見るのもいいかもって俺は思うわけよ」
「・・・・・・」

 まさかこの男がそこまで考えていたとは、と三蔵は瞠目した。
 三蔵の隣で、花喃も感心したように呟く。

『へえぇ、見た目通りのお馬鹿さんかと思ったら、案外細かい配慮をする子なのね』
(・・・言っとくがこいつは確かあんたと同い年(タメ)な筈だぞ)

 三蔵が心の中で声にすれば花喃にだけ伝わるため、精神世界で交わされる会話は目の前の男――沙悟浄という――には気付かれない。

『でもね、それはあの子の事を解っていない人が言う事よ。
 あの子はね、本当に助けて欲しい時ほど、自分一人の殻に閉じ篭っちゃうんだから』
(成る程な)

 この場は彼をより良く知る側の意見を汲んだ方が良い、そう判断した三蔵は、悟浄に向かっていった。

「立ち直る前に肺炎なんぞでくたばられたら、監督しているこっちの面目が丸潰れだ。
 大層な触覚生やしてるんなら、それらしく捜索に貢献しやがれ」
「なっ・・・これは癖っ毛でだな、触覚なんかじゃ・・・」


 ガウンッ


「捜索に加わるのか、加わらねぇのか、加わらねぇってんなら今すぐ当てるぞ?」
「お、おまっ!いつ安全装置外したのヨ!?ってかここ家!家ン中!!」

 こうしてしのつく雨の中、3人――といっても傍から見れば2人――は八戒を捜し始めた。
 恐らくそんなに遠くへは行っていないと思われるが、いかんせん雨で視界が悪く、捜索は難航した。
 おまけにこの周辺は林になっており、見通しの悪さに拍車を掛けている。
 唯一の例外が、雨も木々も障害にならない花喃だ。

『ああもう、大の男2人掛りで人一人見つけられないなんて、情けないったらないわ』

 事の発端たる人物(の、霊)が、巻き込まれた立場の者達に向かって言いたい放題である。
 ここに三蔵がいれば、盛大な突っ込みが入るだろうが、残念な事に彼は別方向を捜している。
 そして今行方をくらましている己の半身は、これまた残念な事に自分の声や姿を認識出来ない。

『本当に、皆揃ってお馬鹿さんなんだから・・・あら?』

 呟きながら視線を遠くへ向けた際目に入ったものに、花喃は小首を傾げた。
 今まで木の下辺りを重点的に捜していたため気付かなかったが、少し先の大木の枝に引っ掛かっている『何か』。
 緑の葉に囲まれて際立つ真白い色合いと、風もないのに不規則に動くその不自然さに、花喃の直感が働いた。
 その『何か』を目指して移動すると、

『悟能・・・!』

 捜していた自身の片翼は、大木の一番低い枝に登っていた。
 一番低いといっても地面から1.5mはあり、周囲の枝葉で身体は完全に隠れている。
 これでは幾ら捜しても、見つからないのは当然だ。
 そして彼は、先程花喃が見つけた『何か』に向かって手を差し伸べていた。

「その体でそんなところにいたら、食べることも出来ずに死んでしまうでしょう?・・・大丈夫、引っ掛かっている羽を外すだけで、貴方を傷付けたりはしませんから・・・」

 枝に引っ掛かっている『それ』は、白い体に白いたてがみ、白い尾に白い大きなコウモリのような翼を持つ、見たこともない生き物だった。
 青空を飛べば良く映えるだろうその白が、今はところどころ赤く染まっている。
 生い茂る枝葉に羽が挟まり、動けば動くほどその身を傷付けるのだ。
 そして手負いの獣の習性だろう、助けるべく差し出される手に向かって、威嚇するように牙を剥くのだった

『悟能ってば、相変わらず子供と小動物に優しいのね・・・』

 その様子を見た花喃は、怯える獣に近付いた。

「・・・キュ?」

 それまで警笛のような高い威嚇の声を発していたその生き物が、花喃の存在に気付き、顔を向ける。
 やはり人外の存在に聡いのだろう。

『大丈夫よ。その人は、君を助けようとしているだけ。ここにい続けたら、本当に死んじゃうわ・・・だからちょっとだけ、じっとしていましょうね・・・』
「・・・キュウ・・・」

 花喃の言葉は、その不思議な生き物にも通じたらしい。
 剥き出しにしていた牙を引っ込め、もたげていた首を柳のように垂れる。
 攻撃の意思がなくなった事を見てとった八戒は、出来る限り傷に障らないよう注意を払い、生い茂る枝葉からコウモリのような羽を外した。
 羽は自由になったが、白い生き物は大人しくしている。
 ここで逃げようと羽ばたけば、再び枝に羽が引っ掛かる事を、理解しているのだろうか。
 ここは自分が抱えて降りよう、そう考えて着ていた上着を広げれば、その意図を正しく汲んだかのように、白い生き物はその真ん中にぽすんと飛び込んだ。

「いい子ですね。下に降りるから、もう少しじっとしていて下さいね・・・」

 驚かせないように白い生き物を上着でくるみ、それを小脇に抱えて、地面の具合を良く確認して飛び降りる。
 その様子を見ながら、花喃は三蔵の下へ報せに向かった。

「大丈夫ですか?少しだけ雨の中を歩きますけど、我慢して下さいね。家に着いたら、お湯で身体を綺麗に出来ますからね・・・・・・え?」

 木から飛び降りたことで白い生き物が怯えていないかとくるんだ上着越しに話し掛けている時、八戒は自分の下へ走り寄る2つの人影に気付いた。

「悟浄・・・三蔵・・・」

 雨の中自分が出て行った事を知る悟浄はともかく、なぜ三蔵がここにいるのか。
 悟浄が三蔵に知らせに行ったにしては、随分と早い気がするが・・・いや、暗い思考に引きずられているうちに、それくらいには時間が経ったのか。
 花喃が娑婆に留まっていて、瞬時に三蔵に知らせた事を知らない八戒は、疑問符を浮かべながら首を捻った。
 そんな八戒に、悟浄が近付き傘を差し掛ける。

「有難うございます・・・」
「や、何つーか、放っておくと俺の頭か家の壁のどちらかに穴開きかねなかったからさ」
「・・・・・・何ですか、それ」
「取り敢えず、雨の中で立ち話なんざ後ろのご老体には酷だし、早いとこ帰って――」


 ゴリ


「言い残す事はそれだけか?」
「捜索の協力者を撃たないで下さーい」
「・・・何やってんですか貴方がた・・・」
「それはこっちの台詞だ。余計な手間掛けさせんじゃねぇよ」
「・・・すみません」

 この人は自分が雨の夜が駄目な事を知っている。そしてその理由も。
 悟浄に口外はしていないようだが(そこは仕事上の守秘義務があるんだろう・・・多分)。
 しかし、真実を見抜く紫暗の瞳の前では、どんな理由も瑣末なものになるのだろう。
 だから、睨め付けられれば、謝るより他に選択肢は無かった。
 この時点で、この最高僧の不機嫌の原因の8割方が、自分の死んだ片割れにあるということは、八戒には知る由もない。






 寺院に戻った三蔵は、自分が留守にしていた間に積み上げられた書類の山に、眉間の皺を増やした。
 自身も雨の夜が苦手であるにも拘らず陰鬱になる暇のなかった、それは稀有な出来事。



 どっとはらい。


 追記:お判りかも知れませんが、この内容は、オフィシャル小説2巻『鏡花水月』の序盤の内容に香月独自の設定を組み込んだものです。
 大雨の中『頭を冷やしに』と言って出て行った八戒が、木に引っ掛かったらしいジープを保護して家に戻る間の内容が、原作では暗転でぼかされているので思いっきり捏造(笑)。
 この話はもちろんオフィシャル小説の終盤へと続きます(笑)。

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 御大のブログに、全サのマグカップに描かれているイラストが掲載されていました。
 それを見て無性にホットケーキが食べたくなった香月です。
 後で作ろう。
 
 あのひとコマで判るのは、

〇八戒はまず飲み物から入るらしい(見事にケーキが減っていない)
〇今更ながら悟空の食べるスピードが尋常じゃない(八戒が飲み物飲んでフォークを手に取った時には完食一歩手前
〇三蔵様が完全に惰性としか言いようのない態でペットに餌をやるダメ飼い主になっている
〇しかも期待通りそれに喰い付こうとしている悟空
〇てゆーか全員ナイフが無い事にいつになったら気付くんだ

 ホットケーキってナイフとフォークで食べますよね?フォークだけでは切りにくいですよね?
 悟空と悟浄はともかく、あとお箸のマナーは完璧でも洋食のマナーは分からなさそうな三蔵様もともかく、なぜ八戒さんが気付かない・・・?

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 ↑を某子豚のマークのインスタント食品のCMソングに乗せてくれればこれ幸い。

 苦し紛れに日誌ssをサイトに再掲載するのは、文章サイトの管理者としてどうかと思いますが、ブログをご覧になる方は本当にごく僅かなので(そもそもサイト自体万人受けするジャンルじゃないしね)、まあいいかなと(な、じゃないよ)。
 取り敢えず悟浄が不憫なスタンスが一人でも多くの閲覧者様に伝わればおっけー(酷ぇ)。

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 少ーしずつ浮上してきている香月です。
 昨日は我が家に夜景館スタッフが集合。ホムペの話・・・ではなく今月行われる共通の友人の結婚式についての打ち合わせで。
 打ち合わせは問題なく終了しましたが、その後。
 香月宅は狭っ苦しいワンルーム、しかも窓は西向き。

 夕方になると熱気の篭り方が半端ねぇ。

 かといって外はまだ結構日差しが強い、という板挟みで、結局日が傾くまでエアコンで耐え抜きました。
 ちなみにこの物件、朝は毛布欲しくなるくらい冷え込みます
 この気温差も体調崩す原因じゃないかと。

 ところで最近日が長いですねー。まだ15時くらいの感覚で外出したら、既に18時過ぎ、小さいお店は閉まり始めてるよ、てな状態(田舎ですから)。てか一応観光地に挙げられる土地なのに、それでいいのか駅前商店街。


 追記:拍手本当に有難うございます!こんな状態にも拘らず来て下さるって何て嬉しい・・・!!(感涙)

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 暫く振りに本屋へ行きゼロサムとワードを立ち読み。異聞の巻頭カラーはナンですか、何かのバトル漫画ですかという勢い。
 んで頁をめくれば何故か耽美系、しかも中身はスポ根なのがまた何とも(カラーイラストは御大のブログでも一部見られます)。
 取り敢えず異聞→ブラストの順で感想をば。以下反転で。



 まずは異聞。

 青藍様と玄灰ちゃんをいぢめるガネーシャ野郎許すまじ!!
 (玄灰ちゃんが中身歳喰ってるのは承知ですが当方ではちゃん付けする方向で)
 ※ガネーシャ・・・インドで信仰されているヒンドゥー教の神様の一人。象の頭にメタボ腹(←間違ってはいないが罰当たりもいいところだ)が特徴。『夢をかなえるゾウ』でご存知の方もいらっしゃるかも?

 あの修行寺はS傾向の教官しかいないのか・・・
 小ネタでは洋装の持覚氏と姥捨て山に大笑い。

 そしてブラスト。

 うぎゃあああああああああっ!!!?
 いつぞやにも『自分達と瓜二つの敵』というお約束ネタを披露された御大ですが、コレを原作でヤりますか!?というべき荒業。流石御大。
 どーやらリクエストが多かったネタらしく、それを実現させたそうで、明らかに特定の層に手厚いファンサービスですね。
 でも〇〇様(敢えて伏せてみる)の顔で〇〇さん(こちらも敢えて伏せてみる)スマイルをしたら異聞の光明様にしか見えない。この場合光明様に似ているのはどちらでしょうか?

 原作では流石に一発ネタ的な話で終わるようですが、二次創作作家の多くが一度は手掛けるかも知れない(ドリーム派はやりません。やるのは・・・以下略)このネタ、香月が昔読んでかなり面白かった話の一文。

 (〇〇さんが喫煙者のどちらかと入れ替わった内容で)
『腹の中は真っ黒でも肺はピンクでいたいらしい』
 ・・・10年以上前に書かれたssを覚えている頭の構造が自分でも理解出来ません。

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 少し前からちょっとずつこの日誌内で連載している(というより書いた物が結果的に連載になっている)ssで、さて続きを書こうとしてペンが止ま・・・もといキーボードを打つ手が止まりました。
 時期的にはアレの後、ナニの前・・・この時点でこの内容に間違いはないだろうか・・・
 本館の作品もそうですが、原作準拠の話を書くとなれば、当然その原作と食い違ったものは書きたくないのが書き手の本音。
 一部の二次創作作家さんは『時期的には原作のあの辺に当たりますが、あれはあれ、これはこれ』と割り切ってしまえるのでしょうが、香月にはそれが出来ない。
 やおら携帯を手に取ると、館長へメール。

『最遊のオフィシャル(←笑)小説持ってないよね・・・』

 数分後、

『持ってるよ』

 心の友よ!!(byジャ〇アン)

 よくよく考えればブログ内で書くssにそこまでする暇あるんなら本編何とかしろよって感じですが、やはり第三者様が読まれる以上、ブログssとて疎かには出来ないのです。損な性分。

 そんな感じであれこれ手を付けながら遅々として進まない西フロアはさておき、南フロアにて学芸員の人物画2点をupしました。とっても美しい作品です。が、

 コントラストの差が半端ないので覚悟の程を。

 うーむ、先に濃い色の作品を置くべきだったか?

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 ↓で学芸員の言う通り、冬は元々嫌いではありません。寒いと寝起きが半端なく悪くなりますが
 逆に気温の上がってきた今、睡眠時間が一気に短くなってきています。その最たる要因が、

 

 つい数日前にも、香月の血をたんまり吸って体が赤茶色く見える程赤色色素をたっぷり含んだヤツを叩きましたが、それにも拘らず、今朝も噛まれた痒みで強制的起床。実質睡眠時間3時間(泣)。
 一応ノーマットを焚いてますが、どちらかというと自分の手で叩き潰したいと考えるタイプなので、暫くは蚊の気配を感じて飛び起きることになるのかと。

 ・・・ますます疲れが溜まっていく・・・

 話変わって、皆様、今日中に一度はGo〇gleへ行ってみられると面白いかと。特に館長辺りがツボりそうです。

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 かなりご無沙汰です。
 暇さえあればパソを立ち上げるのですが、現在進行形の作品が遅々として進まない。
 しかも根っからの完璧主義(注:執筆関連のみ)なのが災いし、あれやこれやと調べる事が山のようにある。二次創作書くのに戸籍法やら世界地図やらマイクロフィルムやら調べる人間が何所にいますかっての。
 そして済まないです学芸員、預かり中の作品、まだupしてません(見れば判るよ)。時期的に今月中には何とかしたいと。
 それにしても現在どうにもこうにも気持ちが前向きになりません。今好きなクイズ番組を放送している時間帯なのに、見る気にもなれない。買い物は仕事の前か後で、休日に外出する気力すらない。

 ・・・五月病?(※香月は勤続5年を超えています)

 ネットを繋ぐ時は方々の二次創作サイト様を訪問することを楽しみにしているので、欝でないことは確かですが。

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