20070812開設
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昨日は仕事が忙しくて12時間近く職場にいた香月ですが、今日はまったりのんびり。ああ毎年棚卸しが日曜になればいいのに(ンな無茶な)。
今現在地道に書き進めている作品に手を付けたいのですが、まあせっかくの機会なので、世間様並みにハロウィンssでも、と考えて書いてみました↓
(長安・旅の前)
数日前の大雨のせいで急激に寒くなってきたが、そんな事もお構いなしに、悟空は枯葉舞う林を小走りに進む。
後から遅れて歩いてくるのは、その保護者(本人曰く『百歩譲って飼い主』)だ。
向かうのは、林の先の一軒家。
「三蔵三蔵!旨そーな匂いがする!」
(・・・この距離で判るのか?)
まあ自分達があの家に呼ばれる時は、必ずといっていいほど様々な料理がふんだんに用意されているので、彼らの家が見えると同時に出てくるその台詞は、ほぼ条件反射に近いかも知れない。
林の一部が切れ、こぢんまりとした民家が見えてくる。
相も変わらず小さなボロ屋だが、今日は少しだけ様子が違う。
玄関ドア付近に幾つも置かれた、オレンジ色の物体。
近付いて見ると、それは大きなかぼちゃをくり抜き、顔のように仕上げられ、中にロウソクが入っている。
今はまだ日が高いが、秋の日はつるべ落とし。
あと1時間もすれば、このロウソクに火が灯され、行灯(←笑)のような状態になるのだろう。
「さんぞー、遅ぇってば!――っ痛ぇ!!」
「やかましい猿」
「だって、今日は『合言葉』言わねぇと入れてくれないんだろ?メモ持ってるの三蔵じゃん。教えてよ何て言うのか」
ここに赤い髪の男がいれば、『「山」「川」じゃねぇんだからよ;』と突っ込みが入るだろうが、残念ながら今ここにいるのは彼ら2人だけ。
そしてドアの向こう、家の中には彼ら以上にこの状況を楽しんでいる者が――
コツ コツ コツ コツ
ドアをノックすれば、
「何方ですかぁ?」
何方も此方も、町外れのこんな家、訪れる人間など他にいる筈もなかろうに。
現に、語尾が間延びしている。
呆れた顔の三蔵とは逆に、悟空は真剣な顔で三蔵から受け取ったメモを見ている。
今日は、ここに書かれた言葉を言わないと中に入れないし、ご馳走にもありつけないのだ、彼としては真剣になるのも無理はない。
「え、えーと・・・と、トリ、トリック、オ・・・オア・・・?」
「・・・Trick or treat」
見かねた三蔵が代わりに言えば、
「Happy Halloween!――さあどうぞ♪」
まるで『開けゴマ』で開いた岩壁の如く、瞬時にドアが開き、中から八戒が出迎えた。
三蔵達を迎えたのは、八戒だけではない。
「・・・・・・(汗)」
「凄ぇ!!」
テーブルを埋め尽くすほど用意された――
「かぼちゃのパウンドケーキにかぼちゃのムース、かぼちゃのクッキーにかぼちゃパイ、かぼちゃのマドレーヌにかぼちゃのカップケーキ、かぼちゃのスコーンにかぼちゃのタルトレット、かぼちゃドーナツにかぼちゃのかりんとう、冷蔵庫にはかぼちゃのシュークリームにかぼちゃプリン、かぼちゃのアイスクリーム、あと三蔵が食べられるようにかぼちゃ団子とかぼちゃ饅頭、かぼちゃ善哉も用意しました。晩ご飯にはかぼちゃグラタンとかぼちゃのポタージュスープ、かぼちゃのニョッキにかぼちゃパンを作っているところです。どうぞ召し上がれ♪」
ハロウィン向けの料理本を制覇する勢い――というか実際制覇したのだろう――のかぼちゃ料理・菓子の数々。
その甘い匂いだけで三蔵は食欲が失われそうだが、逆に悟空は食欲中枢が刺激されたようだ。
「いただきまーす♪」
目にも留まらぬ速さで手を洗ってからテーブルに着き、お菓子を口に運び始めた。
今すぐこの場から立ち去りたい、というか逃げ出したい三蔵だが、状況が許さない。
「・・・コーヒー・・・ブラックで」
今はとにかく、甘みのある物は口にしたくない。
即座に出された(彼らの来訪に合わせてドリップされていた。流石だ)黒い液体を一口飲み、三蔵は疑問を口にした。
「あのバカはどうした」
「晩酌用のワインを買いに出掛けましたけど、少し遅いですね。まあこういう日ですから、綺麗なお姉さんに捕まっているのかも知れませんが」
逃げたな・・・!
恐らくは調理中からこの家に充満した甘い匂いに辟易して、買い物を買って出たに違いない。
ということは、悟空がこれらの菓子を腹に収めるまで、どこぞで時間を潰しているのだろう。
取り敢えず、戻った瞬間に銃弾を見舞わせる事を心に決めた三蔵だった。
三蔵の予想通り、殆どのお菓子(和菓子は三蔵向けなので、手を付けていない)が悟空の腹に消える頃、見計らった悟浄が戻って来て一騒動起きた。
ワインの瓶を死守しながら(割ってしまったら、ここまで重い思いをして運んだ自分が哀れだし、更にその後大変な目に遭うからだ)自分の身を守った悟浄は、後に『反射神経の限界を更新した』と言ったとか。
そうして夜も更けた頃、満腹で熟睡モードに入った悟空をリビングのソファに寝かせ、残る3人でワインや酒を空け始めた。
「それにしても、皆のお陰でかぼちゃが全部さばけて助かりました。
八百屋の小母さんが言った『ハロウィン用のかぼちゃ1つ』が1ケースとは思わず、3つも頼んじゃって・・・」
「「・・・(汗)」」
「そういえば、仮装もしてみたかったんですが、時間がありませんでしたねぇ。また来年にでも・・・」
「「それはやめろ/やめてクダサイ」」
「それにしても、貴方が『Trick or treat』をご存知とは思いませんでした」
「悪いか」
「だって三蔵サマ、サンタクロースも知らなかったじゃんよ。つーかどんな顔して言ったんだか」
「ほざけ」
放っておけば突っ込みの手を強めかねない2人を突っぱね、手ずからワインを注ぐ三蔵。
まだこの渋みを堪能することのなかった子供の頃、
『「はろうぃん」というのはですね、異教徒のお祭りなんですが、その日は地獄の門が開いて、悪霊悪鬼がわんさか常世に出て来るんです。
悪霊はかぼちゃが嫌いなので、かぼちゃの料理を並べて悪霊を追い払います。
運悪くかぼちゃを用意出来なかった人は、かぼちゃ料理を作ったお家の玄関で、「Trick or treat!」という合言葉を言って、そのお家からお菓子を恵んでもらわないといけないんですよ』
などと自分に教えた彼の人の面影が蘇る。
今の地位に立ち、それなりに他宗教の知識も取り入れるようになってから、ようやくそれが嘘っ八だったと解ったのだが。
あの人は、成長して真実を知った自分と異教の行事を楽しむつもりだったのだろうか。そう思うと、心境は複雑だ。
でもまあそれら諸々の経緯を辿り、今こうして肩の力を抜いて酒を楽しむ時間と場所があるのはそう悪くない、そう独りごちた三蔵だった――
どっとはらい。
追記:あら何だかしんみり?
光明様ってばクリスマスを『邪教の儀式』と幼少時の三蔵様(江流)に教えたくらいですから、ハロウィンもそれなりの嘘八百を教えたことと思い、こんな内容に。
きっと大霜寺時代に一之班総勢で仮装パーティーとかしたに違いありません。
・・・せー様の反応が気になるところですが(そこかい)。
今現在地道に書き進めている作品に手を付けたいのですが、まあせっかくの機会なので、世間様並みにハロウィンssでも、と考えて書いてみました↓
(長安・旅の前)
数日前の大雨のせいで急激に寒くなってきたが、そんな事もお構いなしに、悟空は枯葉舞う林を小走りに進む。
後から遅れて歩いてくるのは、その保護者(本人曰く『百歩譲って飼い主』)だ。
向かうのは、林の先の一軒家。
「三蔵三蔵!旨そーな匂いがする!」
(・・・この距離で判るのか?)
まあ自分達があの家に呼ばれる時は、必ずといっていいほど様々な料理がふんだんに用意されているので、彼らの家が見えると同時に出てくるその台詞は、ほぼ条件反射に近いかも知れない。
林の一部が切れ、こぢんまりとした民家が見えてくる。
相も変わらず小さなボロ屋だが、今日は少しだけ様子が違う。
玄関ドア付近に幾つも置かれた、オレンジ色の物体。
近付いて見ると、それは大きなかぼちゃをくり抜き、顔のように仕上げられ、中にロウソクが入っている。
今はまだ日が高いが、秋の日はつるべ落とし。
あと1時間もすれば、このロウソクに火が灯され、行灯(←笑)のような状態になるのだろう。
「さんぞー、遅ぇってば!――っ痛ぇ!!」
「やかましい猿」
「だって、今日は『合言葉』言わねぇと入れてくれないんだろ?メモ持ってるの三蔵じゃん。教えてよ何て言うのか」
ここに赤い髪の男がいれば、『「山」「川」じゃねぇんだからよ;』と突っ込みが入るだろうが、残念ながら今ここにいるのは彼ら2人だけ。
そしてドアの向こう、家の中には彼ら以上にこの状況を楽しんでいる者が――
コツ コツ コツ コツ
ドアをノックすれば、
「何方ですかぁ?」
何方も此方も、町外れのこんな家、訪れる人間など他にいる筈もなかろうに。
現に、語尾が間延びしている。
呆れた顔の三蔵とは逆に、悟空は真剣な顔で三蔵から受け取ったメモを見ている。
今日は、ここに書かれた言葉を言わないと中に入れないし、ご馳走にもありつけないのだ、彼としては真剣になるのも無理はない。
「え、えーと・・・と、トリ、トリック、オ・・・オア・・・?」
「・・・Trick or treat」
見かねた三蔵が代わりに言えば、
「Happy Halloween!――さあどうぞ♪」
まるで『開けゴマ』で開いた岩壁の如く、瞬時にドアが開き、中から八戒が出迎えた。
三蔵達を迎えたのは、八戒だけではない。
「・・・・・・(汗)」
「凄ぇ!!」
テーブルを埋め尽くすほど用意された――
「かぼちゃのパウンドケーキにかぼちゃのムース、かぼちゃのクッキーにかぼちゃパイ、かぼちゃのマドレーヌにかぼちゃのカップケーキ、かぼちゃのスコーンにかぼちゃのタルトレット、かぼちゃドーナツにかぼちゃのかりんとう、冷蔵庫にはかぼちゃのシュークリームにかぼちゃプリン、かぼちゃのアイスクリーム、あと三蔵が食べられるようにかぼちゃ団子とかぼちゃ饅頭、かぼちゃ善哉も用意しました。晩ご飯にはかぼちゃグラタンとかぼちゃのポタージュスープ、かぼちゃのニョッキにかぼちゃパンを作っているところです。どうぞ召し上がれ♪」
ハロウィン向けの料理本を制覇する勢い――というか実際制覇したのだろう――のかぼちゃ料理・菓子の数々。
その甘い匂いだけで三蔵は食欲が失われそうだが、逆に悟空は食欲中枢が刺激されたようだ。
「いただきまーす♪」
目にも留まらぬ速さで手を洗ってからテーブルに着き、お菓子を口に運び始めた。
今すぐこの場から立ち去りたい、というか逃げ出したい三蔵だが、状況が許さない。
「・・・コーヒー・・・ブラックで」
今はとにかく、甘みのある物は口にしたくない。
即座に出された(彼らの来訪に合わせてドリップされていた。流石だ)黒い液体を一口飲み、三蔵は疑問を口にした。
「あのバカはどうした」
「晩酌用のワインを買いに出掛けましたけど、少し遅いですね。まあこういう日ですから、綺麗なお姉さんに捕まっているのかも知れませんが」
逃げたな・・・!
恐らくは調理中からこの家に充満した甘い匂いに辟易して、買い物を買って出たに違いない。
ということは、悟空がこれらの菓子を腹に収めるまで、どこぞで時間を潰しているのだろう。
取り敢えず、戻った瞬間に銃弾を見舞わせる事を心に決めた三蔵だった。
三蔵の予想通り、殆どのお菓子(和菓子は三蔵向けなので、手を付けていない)が悟空の腹に消える頃、見計らった悟浄が戻って来て一騒動起きた。
ワインの瓶を死守しながら(割ってしまったら、ここまで重い思いをして運んだ自分が哀れだし、更にその後大変な目に遭うからだ)自分の身を守った悟浄は、後に『反射神経の限界を更新した』と言ったとか。
そうして夜も更けた頃、満腹で熟睡モードに入った悟空をリビングのソファに寝かせ、残る3人でワインや酒を空け始めた。
「それにしても、皆のお陰でかぼちゃが全部さばけて助かりました。
八百屋の小母さんが言った『ハロウィン用のかぼちゃ1つ』が1ケースとは思わず、3つも頼んじゃって・・・」
「「・・・(汗)」」
「そういえば、仮装もしてみたかったんですが、時間がありませんでしたねぇ。また来年にでも・・・」
「「それはやめろ/やめてクダサイ」」
「それにしても、貴方が『Trick or treat』をご存知とは思いませんでした」
「悪いか」
「だって三蔵サマ、サンタクロースも知らなかったじゃんよ。つーかどんな顔して言ったんだか」
「ほざけ」
放っておけば突っ込みの手を強めかねない2人を突っぱね、手ずからワインを注ぐ三蔵。
まだこの渋みを堪能することのなかった子供の頃、
『「はろうぃん」というのはですね、異教徒のお祭りなんですが、その日は地獄の門が開いて、悪霊悪鬼がわんさか常世に出て来るんです。
悪霊はかぼちゃが嫌いなので、かぼちゃの料理を並べて悪霊を追い払います。
運悪くかぼちゃを用意出来なかった人は、かぼちゃ料理を作ったお家の玄関で、「Trick or treat!」という合言葉を言って、そのお家からお菓子を恵んでもらわないといけないんですよ』
などと自分に教えた彼の人の面影が蘇る。
今の地位に立ち、それなりに他宗教の知識も取り入れるようになってから、ようやくそれが嘘っ八だったと解ったのだが。
あの人は、成長して真実を知った自分と異教の行事を楽しむつもりだったのだろうか。そう思うと、心境は複雑だ。
でもまあそれら諸々の経緯を辿り、今こうして肩の力を抜いて酒を楽しむ時間と場所があるのはそう悪くない、そう独りごちた三蔵だった――
どっとはらい。
追記:あら何だかしんみり?
光明様ってばクリスマスを『邪教の儀式』と幼少時の三蔵様(江流)に教えたくらいですから、ハロウィンもそれなりの嘘八百を教えたことと思い、こんな内容に。
きっと大霜寺時代に一之班総勢で仮装パーティーとかしたに違いありません。
・・・せー様の反応が気になるところですが(そこかい)。
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