20070812開設
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似たようなタイトルの日誌が過去にあったかも知れませんがそれはそれ、これはこれ。
フィギュア高橋選手おめでとうございます。ライサチェック選手やプルシェンコ選手等々が不在であったため、100%満足とはいかないみたいですが、それでも我々ファンにとっては世界一のタイトルを取ることは素晴らしい事なんです。改めて拍手。
それから彼の応援の為、午前6時に大学へ集まったK大学の皆様もかなり凄い。香月の大学は実家から2時間かかる場所だったので、同じ事をしろと言われても絶対無理です。電車がないですもん。
で、それはともかく。
生放送が午前5時そこらなのは時差があるのだから当然仕方ないとして、
録画の放送を午後4時にしないで下さいフ〇テレビ!!
仕事の真っ最中で見れるわけないじゃないですかこん畜生。
でも中途半端に少しだけ見えるし聞こえるので気が散りまくり、お陰で普段の3倍は書類ミスしてしまいましたよ。
フィギュア高橋選手おめでとうございます。ライサチェック選手やプルシェンコ選手等々が不在であったため、100%満足とはいかないみたいですが、それでも我々ファンにとっては世界一のタイトルを取ることは素晴らしい事なんです。改めて拍手。
それから彼の応援の為、午前6時に大学へ集まったK大学の皆様もかなり凄い。香月の大学は実家から2時間かかる場所だったので、同じ事をしろと言われても絶対無理です。電車がないですもん。
で、それはともかく。
生放送が午前5時そこらなのは時差があるのだから当然仕方ないとして、
録画の放送を午後4時にしないで下さいフ〇テレビ!!
仕事の真っ最中で見れるわけないじゃないですかこん畜生。
でも中途半端に少しだけ見えるし聞こえるので気が散りまくり、お陰で普段の3倍は書類ミスしてしまいましたよ。
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3/7・13のssから、更に続きの話。
段々三蔵サマが変になっているかも知れない旨平にご容赦を↓
その日、かつて千の妖怪を死に追いやった青年が、新しい生を歩み始めた――
慶雲院の正面階段。
着替え程度の僅かな手荷物のみを携え、片眼鏡の青年は背後にいる人物の方を向き、深く頭を下げた。
「・・・お世話に、なりました・・・」
「別に世話なんざした覚えはねぇがな。
取り敢えず、住所が決まったら報告に来い」
「はい、必ず。
――それでは、失礼します・・・」
再び頭を下げた後、階段を下りていく。
かつて罪を犯した猪悟能という名の青年。
千の妖怪を初め多くの命を屠り、自らも妖怪へと変化した彼は、犯した罪を死ではなく生を以って償う事を言い渡された。
そして今日、『猪悟能』としての戸籍は完全に抹消され、新しく授けられた名『猪八戒』として、再生の第一歩を踏み出したのだ。
階段を降りきったところで三度自分に向かって頭を下げる姿を見たのを最後に、踵を返して建物へと戻る。
ここ1月程、やれ調査だやれ協議だやれ書類作成だと、普段の倍以上の仕事に追われた気がする。
が、それも今日で一段落し、後は保護観察という名目で月に2度程の家庭訪問を行えばいい。
大量虐殺犯とはいえ、その原因は愛するものを奪われた事による報復行動であり、無差別の殺戮ではない上、元はどちらかというと争いを好まない性格であると調査書にはある。
実際留置されていた期間も、その態度や言動は、犯した罪とは程遠い印象を受けるものであったのだから、今後面倒を起こすこともないだろう。
となると――
これであの女ともおさらばだ・・・!
その目が据わっている事に、残念ながら気付く者もツッコむ者もいない。
『あの女』こと、猪花喃。
猪悟能の双子の姉であり、情を交わした相手でもあり――そして、既にこの世の者ではない人物。
妖怪に手篭めにされ身篭った事を苦に自害した、ある意味激情型な女のだが、想う者が生きる屍のような状態になっているのを見かねたらしく、
『あの子がある程度私の事に折り合いをつけて、気持ちの整理が出来た辺りでちゃんと成仏するから』
などと言ってあの世への旅立ちを先送りにし、彼の臨時監視員としてこの世に留まったのだ。
しかも解せないことに、その姿や声を認識出来るのが自分だけであったため、彼女の不平不満を一手に引き受ける形になってしまった事が、忙しさに拍車をかけたといえよう。
何が『浮いた人件費で義眼を』だ、そりゃ寺全体で見れば人件費は浮いたかも知れんが、俺一人の労働量は逆に増えてんだよ!
その時の状況を思い出したのか、金髪の下のこめかみに青筋が立つ。
確かに、市井に戻すにあたって、片目が抉られたままというのは堅気扱いが難しくなるため、義眼を入れる事自体に異論はなかったが、
『あの子の瞳の色はこんな色じゃないわ。もっと深みがあって少し青みがかった、とても綺麗な碧なのよ。
何よこの薄っぺらい緑色は?こんな安っぽい色の義眼、あの子の貌に合うわけないじゃないの!』
などと言って、義眼の光彩に嵌める素材に何度もケチをつける始末だ。
無視などしようものなら本気で半永久的に慶雲院に居座りかねないため、仕方なくその要求に従った事は、墓場まで持って行く秘密である。
そして今日。
猪悟能改め猪八戒がこの建物を出るまでの間、密かに周囲の気配を窺ったが彼女は何処にも存在しなかった。
猪悟能が勾留されていた頃も、四六時中自分や猪悟能の傍にいたわけでなく、例えば悟能の就寝中などは、ある種の異次元に存在していたと本人(本霊?)は言っていた。
が、今回は勝手が違う。
釈放についても改名についても既に伝えていたので、きっと本懐を遂げて成仏したのだろう。
物理的に開放されたのは猪悟能かも知れないが、精神的に開放されたのはこちらかも知れない。
そう思うと、執務室に戻ってから初めて吸った煙草が、この数週間の中で一番美味く感じられた。
それから数刻程、煙草の味を噛み締めながらルーチンワークに専念していると、
「三蔵様、猪悟能・・・あ、いえ、猪八戒が謁見を求めております。
沙悟浄と名乗る者も一緒とのことですが、如何致しましょう?」
「・・・通せ」
意外というよりは、やはり、という気持ちで、伝達役の僧侶に指示する。
自分が猪悟能を捜索していた際、彼を匿っていたのが、あの赤毛の男だ。
本来ごく普通の――その素行はお世辞にも良いとは言い難かったが――小市民であるため、猪悟能が逮捕された時点で、彼とも、そして自分とも接点を絶つつもりで『猪悟能は死んだ』と言っておいたのだが。
人となりは正反対でも、深い部分で共通項もあったらしいあの2人は、何のかんの言って馬が合うのだろう。
三方良しを狙ったいつぞやの行動について文句を言われることは間違いないため、さて何と言ってやろうと考えながらドアが開かれるのを待つ。
「あっれー、悟浄じゃん」
先程の僧侶と入れ違いだったのか、2人が来る事を知らなかった悟空が、素っ頓狂な声を上げる。
視線を上にやると、律儀に悟空に挨拶する八戒と――
「似合わねぇ頭」
「うっせぇ猿」
『ヤッホー、似非最高僧♪』
(何で貴様がここにいる!!?)
格式高い寺院に於いてとことん場違いなランニング姿の長身の男。
その肩に、成仏したと思っていた猪花喃の霊がちょこんと座っていた。
腰を下ろされている当人は、全く気付いていない。
悟空もやはり見えていないようなので、声を荒げる事は出来ず、心の中で盛大にツッコむ。
こちらの言いたい事は、心の中で声にすれば相手に伝わるのだ。
『私は、この子がある程度私の事に折り合いをつけて、気持ちの整理が出来た辺りで、と言ったのよ?
自傷は治まっても、まだ精神的に安定したとは到底言えないじゃない。
こんなんじゃ私、安心して逝けないわ』
(ンなの屁理屈だろうが!本気で強制送還するぞ!)
『あらヤダ女性に無体な事するっていうの?ホント似非最高僧なんだから』
今すぐここで魔戒天浄してやろうかと考えた時、赤ゴキブリが予想通り先日の事についての文句を言ってきたため、意識が逸れてしまった。
くそ、いっそコイツごと浄化させるか?
とは思っても流石に盗賊でもない一市民を殺ってしまうと色々面倒なので、この場は抑えておくことにした。
代わりにといっては何だが、半分八つ当たり気味に赤ゴキブリを理屈で押さえつける。
悟空が八戒に名を聞いたのをきっかけに、馬鹿同士の騒ぎ合いが始まった。
流石に五月蝿いと感じたのか、赤ゴキブリの肩から猪花喃の霊がふわりと床に降り立つ。
『・・・まだ、凄く無理してる顔なのよ』
(・・・・・・)
この女を喪った後の顔しか知らない自分にとっては、ここで勾留されていた頃の荒みきった顔付きよりか随分マシだとは思うが、最も幸せな時を共に過ごしたこの女にとっては、これでもまだ不十分らしい。
『人間から妖怪に変化してしまって――憎むべき相手だった妖怪によ?本当なら半狂乱になっているわ。
今は環境の変化に対応する事に気を取られているけど、いずれその現実と直面する時が来ると思うの。
その時、また自傷行為が増えるかも――ううん、自殺しかねないわ。
保護観察の対象が自殺したら、貴方だって困るんじゃなくって?』
(・・・・・・)
よくもまあ、これだけの屁理屈が出て来るものだ。
数分前に悟浄に屁理屈を言っていた事は棚に上げ、呆れたため息を吐く。
傍に立っていた八戒に様子を聞いたところ、思った通りあの赤毛の男と一緒に暮らすという。
目の前に姉がいることは、やはり判らないらしい。
・・・どーにかしてチューニング出来んのか。
『ほんっと、悟能ってば、頭はいいのに、肝心なところでお馬鹿さんなのよね。
というわけで似非最高僧、私、常駐監視員としてこの子の傍にいるから、もしもの時はお願いね♪
あの赤毛の男の子も全然霊感ないみたいで、役に立たなさそうだし?』
(・・・・・・)
毒を喰らわば皿まで。
そんな諺が脳裏に浮かんだ――
その日から、仕事の下請けや悟空の家庭教師など、慶雲院統括責任者と元罪人、そしてその姉の霊との奇妙な縁は細々と続く。
幼い頃より孤立無援の日々を過ごしてきた最高僧の、それは稀有な出来事。
どっとはらい。
追記:え、花喃姉様まだ居座るんですか?(汗)
Mちゃん、誕生日に悟空出現率3%未満の代物でゴメンなさい(私信)。
段々三蔵サマが変になっているかも知れない旨平にご容赦を↓
その日、かつて千の妖怪を死に追いやった青年が、新しい生を歩み始めた――
慶雲院の正面階段。
着替え程度の僅かな手荷物のみを携え、片眼鏡の青年は背後にいる人物の方を向き、深く頭を下げた。
「・・・お世話に、なりました・・・」
「別に世話なんざした覚えはねぇがな。
取り敢えず、住所が決まったら報告に来い」
「はい、必ず。
――それでは、失礼します・・・」
再び頭を下げた後、階段を下りていく。
かつて罪を犯した猪悟能という名の青年。
千の妖怪を初め多くの命を屠り、自らも妖怪へと変化した彼は、犯した罪を死ではなく生を以って償う事を言い渡された。
そして今日、『猪悟能』としての戸籍は完全に抹消され、新しく授けられた名『猪八戒』として、再生の第一歩を踏み出したのだ。
階段を降りきったところで三度自分に向かって頭を下げる姿を見たのを最後に、踵を返して建物へと戻る。
ここ1月程、やれ調査だやれ協議だやれ書類作成だと、普段の倍以上の仕事に追われた気がする。
が、それも今日で一段落し、後は保護観察という名目で月に2度程の家庭訪問を行えばいい。
大量虐殺犯とはいえ、その原因は愛するものを奪われた事による報復行動であり、無差別の殺戮ではない上、元はどちらかというと争いを好まない性格であると調査書にはある。
実際留置されていた期間も、その態度や言動は、犯した罪とは程遠い印象を受けるものであったのだから、今後面倒を起こすこともないだろう。
となると――
これであの女ともおさらばだ・・・!
その目が据わっている事に、残念ながら気付く者もツッコむ者もいない。
『あの女』こと、猪花喃。
猪悟能の双子の姉であり、情を交わした相手でもあり――そして、既にこの世の者ではない人物。
妖怪に手篭めにされ身篭った事を苦に自害した、ある意味激情型な女のだが、想う者が生きる屍のような状態になっているのを見かねたらしく、
『あの子がある程度私の事に折り合いをつけて、気持ちの整理が出来た辺りでちゃんと成仏するから』
などと言ってあの世への旅立ちを先送りにし、彼の臨時監視員としてこの世に留まったのだ。
しかも解せないことに、その姿や声を認識出来るのが自分だけであったため、彼女の不平不満を一手に引き受ける形になってしまった事が、忙しさに拍車をかけたといえよう。
何が『浮いた人件費で義眼を』だ、そりゃ寺全体で見れば人件費は浮いたかも知れんが、俺一人の労働量は逆に増えてんだよ!
その時の状況を思い出したのか、金髪の下のこめかみに青筋が立つ。
確かに、市井に戻すにあたって、片目が抉られたままというのは堅気扱いが難しくなるため、義眼を入れる事自体に異論はなかったが、
『あの子の瞳の色はこんな色じゃないわ。もっと深みがあって少し青みがかった、とても綺麗な碧なのよ。
何よこの薄っぺらい緑色は?こんな安っぽい色の義眼、あの子の貌に合うわけないじゃないの!』
などと言って、義眼の光彩に嵌める素材に何度もケチをつける始末だ。
無視などしようものなら本気で半永久的に慶雲院に居座りかねないため、仕方なくその要求に従った事は、墓場まで持って行く秘密である。
そして今日。
猪悟能改め猪八戒がこの建物を出るまでの間、密かに周囲の気配を窺ったが彼女は何処にも存在しなかった。
猪悟能が勾留されていた頃も、四六時中自分や猪悟能の傍にいたわけでなく、例えば悟能の就寝中などは、ある種の異次元に存在していたと本人(本霊?)は言っていた。
が、今回は勝手が違う。
釈放についても改名についても既に伝えていたので、きっと本懐を遂げて成仏したのだろう。
物理的に開放されたのは猪悟能かも知れないが、精神的に開放されたのはこちらかも知れない。
そう思うと、執務室に戻ってから初めて吸った煙草が、この数週間の中で一番美味く感じられた。
それから数刻程、煙草の味を噛み締めながらルーチンワークに専念していると、
「三蔵様、猪悟能・・・あ、いえ、猪八戒が謁見を求めております。
沙悟浄と名乗る者も一緒とのことですが、如何致しましょう?」
「・・・通せ」
意外というよりは、やはり、という気持ちで、伝達役の僧侶に指示する。
自分が猪悟能を捜索していた際、彼を匿っていたのが、あの赤毛の男だ。
本来ごく普通の――その素行はお世辞にも良いとは言い難かったが――小市民であるため、猪悟能が逮捕された時点で、彼とも、そして自分とも接点を絶つつもりで『猪悟能は死んだ』と言っておいたのだが。
人となりは正反対でも、深い部分で共通項もあったらしいあの2人は、何のかんの言って馬が合うのだろう。
三方良しを狙ったいつぞやの行動について文句を言われることは間違いないため、さて何と言ってやろうと考えながらドアが開かれるのを待つ。
「あっれー、悟浄じゃん」
先程の僧侶と入れ違いだったのか、2人が来る事を知らなかった悟空が、素っ頓狂な声を上げる。
視線を上にやると、律儀に悟空に挨拶する八戒と――
「似合わねぇ頭」
「うっせぇ猿」
『ヤッホー、似非最高僧♪』
(何で貴様がここにいる!!?)
格式高い寺院に於いてとことん場違いなランニング姿の長身の男。
その肩に、成仏したと思っていた猪花喃の霊がちょこんと座っていた。
腰を下ろされている当人は、全く気付いていない。
悟空もやはり見えていないようなので、声を荒げる事は出来ず、心の中で盛大にツッコむ。
こちらの言いたい事は、心の中で声にすれば相手に伝わるのだ。
『私は、この子がある程度私の事に折り合いをつけて、気持ちの整理が出来た辺りで、と言ったのよ?
自傷は治まっても、まだ精神的に安定したとは到底言えないじゃない。
こんなんじゃ私、安心して逝けないわ』
(ンなの屁理屈だろうが!本気で強制送還するぞ!)
『あらヤダ女性に無体な事するっていうの?ホント似非最高僧なんだから』
今すぐここで魔戒天浄してやろうかと考えた時、赤ゴキブリが予想通り先日の事についての文句を言ってきたため、意識が逸れてしまった。
くそ、いっそコイツごと浄化させるか?
とは思っても流石に盗賊でもない一市民を殺ってしまうと色々面倒なので、この場は抑えておくことにした。
代わりにといっては何だが、半分八つ当たり気味に赤ゴキブリを理屈で押さえつける。
悟空が八戒に名を聞いたのをきっかけに、馬鹿同士の騒ぎ合いが始まった。
流石に五月蝿いと感じたのか、赤ゴキブリの肩から猪花喃の霊がふわりと床に降り立つ。
『・・・まだ、凄く無理してる顔なのよ』
(・・・・・・)
この女を喪った後の顔しか知らない自分にとっては、ここで勾留されていた頃の荒みきった顔付きよりか随分マシだとは思うが、最も幸せな時を共に過ごしたこの女にとっては、これでもまだ不十分らしい。
『人間から妖怪に変化してしまって――憎むべき相手だった妖怪によ?本当なら半狂乱になっているわ。
今は環境の変化に対応する事に気を取られているけど、いずれその現実と直面する時が来ると思うの。
その時、また自傷行為が増えるかも――ううん、自殺しかねないわ。
保護観察の対象が自殺したら、貴方だって困るんじゃなくって?』
(・・・・・・)
よくもまあ、これだけの屁理屈が出て来るものだ。
数分前に悟浄に屁理屈を言っていた事は棚に上げ、呆れたため息を吐く。
傍に立っていた八戒に様子を聞いたところ、思った通りあの赤毛の男と一緒に暮らすという。
目の前に姉がいることは、やはり判らないらしい。
・・・どーにかしてチューニング出来んのか。
『ほんっと、悟能ってば、頭はいいのに、肝心なところでお馬鹿さんなのよね。
というわけで似非最高僧、私、常駐監視員としてこの子の傍にいるから、もしもの時はお願いね♪
あの赤毛の男の子も全然霊感ないみたいで、役に立たなさそうだし?』
(・・・・・・)
毒を喰らわば皿まで。
そんな諺が脳裏に浮かんだ――
その日から、仕事の下請けや悟空の家庭教師など、慶雲院統括責任者と元罪人、そしてその姉の霊との奇妙な縁は細々と続く。
幼い頃より孤立無援の日々を過ごしてきた最高僧の、それは稀有な出来事。
どっとはらい。
追記:え、花喃姉様まだ居座るんですか?(汗)
Mちゃん、誕生日に悟空出現率3%未満の代物でゴメンなさい(私信)。
明日は休みで(上司が気を遣ったらしい)、明後日から隣町へ業務応援です。
ICカード搭載の名札やハンコ、普段使っている筆記用具など、僅かですが持って行く必要があるので、今日の帰りは少し手荷物が多くなりました。
一応一月ばかり余所へ行くということで、職場の人達とも簡単に挨拶を済ませ、はーやれやれと帰宅の為バイクに乗って数分後、気付いたのです。
職場の冷蔵庫に冷凍パスタ入れっぱなしだ・・・!
引き返しても良かったのですが、もう何だか面倒になってそのまま帰宅。
きっとそのうち誰かが冷凍庫を開けて笑う事でしょう。
(買って入れたところを数人に目撃されている)
話し変わって先程、ある経済番組を見ていたのですが、その中でのコメント。
「最も強い会社は、会社全体が一枚岩である」
ブリッグズか!?
ハガレンをご存じない方はゴメンなさい。
追記:拍手有難うございます♪
ICカード搭載の名札やハンコ、普段使っている筆記用具など、僅かですが持って行く必要があるので、今日の帰りは少し手荷物が多くなりました。
一応一月ばかり余所へ行くということで、職場の人達とも簡単に挨拶を済ませ、はーやれやれと帰宅の為バイクに乗って数分後、気付いたのです。
職場の冷蔵庫に冷凍パスタ入れっぱなしだ・・・!
引き返しても良かったのですが、もう何だか面倒になってそのまま帰宅。
きっとそのうち誰かが冷凍庫を開けて笑う事でしょう。
(買って入れたところを数人に目撃されている)
話し変わって先程、ある経済番組を見ていたのですが、その中でのコメント。
「最も強い会社は、会社全体が一枚岩である」
ブリッグズか!?
ハガレンをご存じない方はゴメンなさい。
追記:拍手有難うございます♪
えー・・・何故か香月の中で妙なブームが来ています。
ツッコみどころ満載なのは承知でお送り致します。
3/7のssを笑って許して下さった方、続きをどうぞ↓
天気の悪い日は、墨や朱肉の乾きが遅く、書類をまとめにくい。
そもそも雨の日は碌な思い出が無いため、そういった些細な事で、イライラに拍車が掛かる。
――そういえばあの男も、雨の日には特に澱んだ目をしていたような気がする。
そこまで考えた時、
『似非最高僧!来てちょうだい!』
(誰が似非最高僧だ!!)
目の前に突如湧いて出た存在に、驚きもせず怒鳴り返す――心の中で。
ふわりとした髪、ふわりとした服装――そして、ふわりと宙に浮く実態感のない身体。
自分の前に現れたのは、紛れもない霊というやつである。
しかも、
『誰がって、この部屋には貴方しかいないじゃないの。もう耄碌しちゃったの?』
(1つしか歳の違わん奴に言われたかないわ!)
『失礼ね、女性に向かって年齢の話をするなんて、マナー違反よ』
(手前が言うか!?)
『ああもう、今はそんな事言ってる場合じゃないのよ。
悟能が何かしようとしているわ。早く来て!!』
凄い剣幕で捲くし立てられ――腹立たしい事にそれは自分にしか聞こえないのだ――、チッと一つ舌打ちながら席を立つ。
曲がりなりにも最高僧である自分に対し、高飛車な物の言い方をするこの女性。
現在勾留中の大量虐殺犯、猪悟能の唯一の肉親だった、猪花喃――の、霊なのだ。
本人(本霊?)は迷っているつもりではなく、弟であり情を交わした相手でもある猪悟能の事が心配で、成仏するのを拒んでいる。
何の因果か、双子の弟にすら判らないその姿や声が、自分には認識出来てしまうため、自傷を繰り返す猪悟能の臨時監視員として、しばらくこの世に留まることを黙認しているのだ。
ちなみに、どうやらこちらの言いたい事を音(オン)にしなくても伝わるようなので、彼女との会話は心の中で声に出すことにしている。
お陰で取り敢えず周囲から奇異の眼で見られる事だけは避けられているが。
(ったく、あの部屋には体を傷付けるような物は置いていない筈だぞ?)
『さっき、悟能がポストに「水を下さい」って書いたメモを入れたのを見たわ。
コップもプラスチック製でしょうけど、割った破片は充分凶器になり得るわよ。
前にも言ったでしょう?こんな天気の日は要注意だって』
ポストというのは、食事トレーの受け渡し口の事だ。
唯一の外部との連絡口であるため、どうしても要求したい事などを紙に書いて入れることで、それを伝える事も可能だ。
そも、大量虐殺犯ということもあり、ここの人間は彼と言葉を交わす事を極端に恐れている節があるため、直接話し掛けられるよりもこの方法を用いる方がかえって有り難いらしい。
そうこうしているうちに、猪悟能の勾留されている部屋がある通路まで来た。
そこには――
「これは、三蔵様・・・!」
盆を持った年若い下男が、慌てて頭を下げた。
どうやら、花喃の言った通り、水を所望した猪悟能の部屋へ差し入れたのだろう。
それを一瞥すると、そのまま廊下を突き進み、猪悟能の部屋のドアを蹴り開けた。
「―――っ!!」
視界に入った光景。
それは、プラスチックのコップを砕いた破片を左手首に宛がう、猪悟能の姿だった。
こんなに早く己の行動を見付けられるとは思っていなかったのだろう、奴にしては珍しく驚いた表情でこちらを振り仰いだ。
取り敢えず、その手に持った即席の凶器を取り上げる――床に散らばった破片も含めて。
「・・・勝手に寺の備品を壊すんじゃねぇ」
「・・・すみません・・・でも、彼女が・・・」
「?」
「彼女が・・・花喃が、いるような気がして・・・」
「・・・・・・」
『気がする』じゃなく実際いるんだよここに。
と言いたいのを必死でこらえる。
多少は霊感があるのか、その存在を薄々感じてはいるらしいが、残念な事に『波長が合っていない』――彼女の言葉を借りれば――ためそれを実感出来ないのが、事を厄介にしている。
つーか手前、チューニングしろ!
貴様にこの女が見えて話が出来りゃ、全て丸く収まるんだよ!
「花喃が、呼んでいるようなんです・・・早く、僕も行かないと――そう、急き立てられる感じがして、つい・・・」
「・・・・・・」
『ふざけた事言ってんじゃないわよっ!!』
半身の言う事が本意ではないのか、黙っていれば見目良い顔を、般若の如く歪めて捲くし立てる。
が、その大声は言いたい相手の耳には届かないのだから、性質が悪い。
『誰が呼んでるですって?私が?貴方を?冗談じゃないわ、何の為に私があんな事したと思ってんのよ!
――似非最高僧!私の言ってる事通訳しなさいよ!』
(阿呆、あんたがここにいるなんて言えるわけねぇだろうが!)
『だったら自分の考えとしてでもいいから、こんな事をするなって言ってちょうだい!』
この世の何処に最高僧を通訳扱いする人間がいるだろうか――って、人間じゃないな。この世の者でもないし。
『呼んでいる』と思っている己の半身が、目の前で凄い剣幕でがなり立てている事を知ったら、この男は何と思うだろうか。
「・・・どいつもこいつも、人使いの荒いこった」
「・・・?」
「とにかくだ。手前の半身が本当に貴様を呼んでるってんなら、あの城で一緒に死ぬよう言ってる筈じゃねぇのか?」
「・・・・・・!!」
「そう言わなかったということは、考えられる事は唯一つ。手前の半身は、手前が自分と一緒に死ぬ事を望んじゃいない、って事だ」
『そういうことよ。解ってるじゃないの似非最高僧』
(その呼び方はやめろ!)
前言撤回、ここに貴様の半身がいると言ってしまえたらどんなに楽か――そこまで考えていや、と思った。
そんな事をしたら、姉弟2人して自分を通訳にしそうだ。間違いなく。
『そっか。貴方を挟んで悟能と会話出来れば、悟能も生きる事に前向きになってくれるかも♪』
(考えを読むな!ってか、ンな事出来るか!却下だ却下!)
『えー、ケチー』
曲がりなりにも最高僧をケチ呼ばわりである。
既に死んでいるんだから怖いものがないということか。
(↑生きていた時も怖いものなしだった事を、三蔵は知らない)
「三仏神から裁きが下されるまではその命、こっちの預かりだ。勝手な事すんじゃねぇよ、解ったか」
「・・・はい・・・」
つーか、貴様が死のうとするのをやめねぇと、この女までここに居座り続けるんだよ!
早く三仏神との協議を終わらせて、この女強制送還してやる・・・!
普段仕事を放り出しがちな若き最高僧がいつになく真剣に任務をこなす気になった、それは稀有な出来事。
どっとはらい。
追記:だから可愛く言えば許されるとゆーわけではないってば(題名)。
ほぼ100%に近いサイト様がシリアスorダーク(流血沙汰だしね)な内容になる悟能勾留期間話。
それをギャグにするか香月(爆)。
三蔵と悟能の会話だけ見れば何処にでもある話なのに、精神世界で漫才勃発(笑)。
ある意味新天地開拓とゆーか、勇者?
ポイントは『チューニング』です。
ツッコみどころ満載なのは承知でお送り致します。
3/7のssを笑って許して下さった方、続きをどうぞ↓
天気の悪い日は、墨や朱肉の乾きが遅く、書類をまとめにくい。
そもそも雨の日は碌な思い出が無いため、そういった些細な事で、イライラに拍車が掛かる。
――そういえばあの男も、雨の日には特に澱んだ目をしていたような気がする。
そこまで考えた時、
『似非最高僧!来てちょうだい!』
(誰が似非最高僧だ!!)
目の前に突如湧いて出た存在に、驚きもせず怒鳴り返す――心の中で。
ふわりとした髪、ふわりとした服装――そして、ふわりと宙に浮く実態感のない身体。
自分の前に現れたのは、紛れもない霊というやつである。
しかも、
『誰がって、この部屋には貴方しかいないじゃないの。もう耄碌しちゃったの?』
(1つしか歳の違わん奴に言われたかないわ!)
『失礼ね、女性に向かって年齢の話をするなんて、マナー違反よ』
(手前が言うか!?)
『ああもう、今はそんな事言ってる場合じゃないのよ。
悟能が何かしようとしているわ。早く来て!!』
凄い剣幕で捲くし立てられ――腹立たしい事にそれは自分にしか聞こえないのだ――、チッと一つ舌打ちながら席を立つ。
曲がりなりにも最高僧である自分に対し、高飛車な物の言い方をするこの女性。
現在勾留中の大量虐殺犯、猪悟能の唯一の肉親だった、猪花喃――の、霊なのだ。
本人(本霊?)は迷っているつもりではなく、弟であり情を交わした相手でもある猪悟能の事が心配で、成仏するのを拒んでいる。
何の因果か、双子の弟にすら判らないその姿や声が、自分には認識出来てしまうため、自傷を繰り返す猪悟能の臨時監視員として、しばらくこの世に留まることを黙認しているのだ。
ちなみに、どうやらこちらの言いたい事を音(オン)にしなくても伝わるようなので、彼女との会話は心の中で声に出すことにしている。
お陰で取り敢えず周囲から奇異の眼で見られる事だけは避けられているが。
(ったく、あの部屋には体を傷付けるような物は置いていない筈だぞ?)
『さっき、悟能がポストに「水を下さい」って書いたメモを入れたのを見たわ。
コップもプラスチック製でしょうけど、割った破片は充分凶器になり得るわよ。
前にも言ったでしょう?こんな天気の日は要注意だって』
ポストというのは、食事トレーの受け渡し口の事だ。
唯一の外部との連絡口であるため、どうしても要求したい事などを紙に書いて入れることで、それを伝える事も可能だ。
そも、大量虐殺犯ということもあり、ここの人間は彼と言葉を交わす事を極端に恐れている節があるため、直接話し掛けられるよりもこの方法を用いる方がかえって有り難いらしい。
そうこうしているうちに、猪悟能の勾留されている部屋がある通路まで来た。
そこには――
「これは、三蔵様・・・!」
盆を持った年若い下男が、慌てて頭を下げた。
どうやら、花喃の言った通り、水を所望した猪悟能の部屋へ差し入れたのだろう。
それを一瞥すると、そのまま廊下を突き進み、猪悟能の部屋のドアを蹴り開けた。
「―――っ!!」
視界に入った光景。
それは、プラスチックのコップを砕いた破片を左手首に宛がう、猪悟能の姿だった。
こんなに早く己の行動を見付けられるとは思っていなかったのだろう、奴にしては珍しく驚いた表情でこちらを振り仰いだ。
取り敢えず、その手に持った即席の凶器を取り上げる――床に散らばった破片も含めて。
「・・・勝手に寺の備品を壊すんじゃねぇ」
「・・・すみません・・・でも、彼女が・・・」
「?」
「彼女が・・・花喃が、いるような気がして・・・」
「・・・・・・」
『気がする』じゃなく実際いるんだよここに。
と言いたいのを必死でこらえる。
多少は霊感があるのか、その存在を薄々感じてはいるらしいが、残念な事に『波長が合っていない』――彼女の言葉を借りれば――ためそれを実感出来ないのが、事を厄介にしている。
つーか手前、チューニングしろ!
貴様にこの女が見えて話が出来りゃ、全て丸く収まるんだよ!
「花喃が、呼んでいるようなんです・・・早く、僕も行かないと――そう、急き立てられる感じがして、つい・・・」
「・・・・・・」
『ふざけた事言ってんじゃないわよっ!!』
半身の言う事が本意ではないのか、黙っていれば見目良い顔を、般若の如く歪めて捲くし立てる。
が、その大声は言いたい相手の耳には届かないのだから、性質が悪い。
『誰が呼んでるですって?私が?貴方を?冗談じゃないわ、何の為に私があんな事したと思ってんのよ!
――似非最高僧!私の言ってる事通訳しなさいよ!』
(阿呆、あんたがここにいるなんて言えるわけねぇだろうが!)
『だったら自分の考えとしてでもいいから、こんな事をするなって言ってちょうだい!』
この世の何処に最高僧を通訳扱いする人間がいるだろうか――って、人間じゃないな。この世の者でもないし。
『呼んでいる』と思っている己の半身が、目の前で凄い剣幕でがなり立てている事を知ったら、この男は何と思うだろうか。
「・・・どいつもこいつも、人使いの荒いこった」
「・・・?」
「とにかくだ。手前の半身が本当に貴様を呼んでるってんなら、あの城で一緒に死ぬよう言ってる筈じゃねぇのか?」
「・・・・・・!!」
「そう言わなかったということは、考えられる事は唯一つ。手前の半身は、手前が自分と一緒に死ぬ事を望んじゃいない、って事だ」
『そういうことよ。解ってるじゃないの似非最高僧』
(その呼び方はやめろ!)
前言撤回、ここに貴様の半身がいると言ってしまえたらどんなに楽か――そこまで考えていや、と思った。
そんな事をしたら、姉弟2人して自分を通訳にしそうだ。間違いなく。
『そっか。貴方を挟んで悟能と会話出来れば、悟能も生きる事に前向きになってくれるかも♪』
(考えを読むな!ってか、ンな事出来るか!却下だ却下!)
『えー、ケチー』
曲がりなりにも最高僧をケチ呼ばわりである。
既に死んでいるんだから怖いものがないということか。
(↑生きていた時も怖いものなしだった事を、三蔵は知らない)
「三仏神から裁きが下されるまではその命、こっちの預かりだ。勝手な事すんじゃねぇよ、解ったか」
「・・・はい・・・」
つーか、貴様が死のうとするのをやめねぇと、この女までここに居座り続けるんだよ!
早く三仏神との協議を終わらせて、この女強制送還してやる・・・!
普段仕事を放り出しがちな若き最高僧がいつになく真剣に任務をこなす気になった、それは稀有な出来事。
どっとはらい。
追記:だから可愛く言えば許されるとゆーわけではないってば(題名)。
ほぼ100%に近いサイト様がシリアスorダーク(流血沙汰だしね)な内容になる悟能勾留期間話。
それをギャグにするか香月(爆)。
三蔵と悟能の会話だけ見れば何処にでもある話なのに、精神世界で漫才勃発(笑)。
ある意味新天地開拓とゆーか、勇者?
ポイントは『チューニング』です。
今日の日付をつらつら考えたら浮かんできた、こんなss↓
(長安、『Be There』終盤?)
その女性は、ふわりとした笑みとふわりとした髪で――ふわりと宙に浮いていた。
「・・・・・・迷ってるってんなら、強制送還するぞ」
『あら、私の事見えるの?』
「見えてるから言ってんだろうが」
『驚いた。あの子には見えていないみたいなのに』
「『あの子』?」
『そう。私の双子の弟で、唯一人愛した男性で――ある意味、もう一人の私自身』
「『猪花喃』か・・・『猪悟能』の唯一の肉親だった」
目の前の人物(というか、霊)の正体に、遅ればせながら気付く。
「つーか、『いる』事に気付くことはあっても、『見えた』のはこれが初めてだ」
『そりゃまあ、何でもかんでも見えていたらさぞ大変でしょうよ。
どうもこういうのって波長みたいなのがあるみたいで、霊感のある人でもそれが合わないと見えないらしいのよ』
「・・・ラジオの周波数かよ」
というか、それが合ってしまった自分の不幸を呪いたくなるが、それは横に置いて。
「ったく、あんたが自害なんぞするから、奴は何度でも後を追おうとする。
俺は僧侶であって、救急救命士じゃねぇんだよ」
日毎夜毎繰り返される自傷行為。
最初の頃はその度に医者を呼んでいたが、呼び出しの頻度の高さに閉口した医者から応急処置の方法を伝えられて実行するうち、今では動脈の圧迫止血まで出来るようになった最高僧である。
『・・・仕方なかったのよ。だって私のお腹には・・・』
妖怪に手篭めにされ、植えつけられた呪わしい種。
彼女の信仰する教えでは、たとえどのような経緯があろうと、堕胎は許されない。
もし、あのまま愛する者の元へ戻ったとしたら、
『憎い妖怪の子が私の中で育っていく――それこそ、生きながらの地獄だわ。あの子にとっても、私にとっても』
「だから、自害したと・・・」
『女はね、短い期間であっても綺麗な思い出があればそれに縋っていられる。
でも男は違うわ。
たった一つの汚点が、インクの染みみたいに全てを黒くしてしまう。
私はあの子の中で、美しい思い出だけの存在で在り続けたかったの』
「・・・有り得ねぇ」
『何とでも言えばいいわ。理解してもらいたいとは思わないから。
ただ、やっぱりまだあのまま放っては逝けないのよね、あの子の事』
「見たのか」
どうやって、というのはこの世の理から解き放たれた存在に対しては愚問だろう。
目の前の美人が壁抜けする図を、無理矢理頭から追い払う。
『それにね、貴方も気付くのが遅いのよ。
気温と湿度と気圧の変化で、自傷したくなりそうな頃合が分かりそうなものでしょう?』
「分かるか!」
『それでもお坊さんなの?人の出生と死は気候や月の満ち欠けと関わり合ってるのよ』
「それだけで死ぬのを喰い止められるなら、人口は増える一方だろうが」
というか、何が悲しくて死んだ後の霊と、バイオリズムについて語り合わねばならないのか。
『他人なんてどうでもいいの。私は貴方に、悟能が死なないよう見守っていて欲しいのよ』
「簡単に言ってくれるがな、こっちだって仕事が山と詰まれてるんだ。奴に見張りを付けようにもここの連中ときたら、血を見ただけで腰を抜かしやがる」
『――つまり、いつでも悟能を見張ることが出来て、血を見ても驚かず、冷静かつ速やかに貴方に報告出来る者がいれば、その後の対処がスムーズだと』
「・・・それはその通りだが、何が言いたい」
『いいわ。私が、しばらくあの子の事見張ってる。そして拙いと思ったら貴方を呼ぶわ。
今の私じゃあの子に触れる事は出来ないけど、そこはお願いするわね』
「・・・・・・・・・は?」
『あ、誤解しないで。ずっと娑婆に留まっているつもりはなくてよ。
あの子がある程度私の事に折り合いをつけて、気持ちの整理が出来た辺りでちゃんと成仏するから』
「・・・・・・・・・」
出来る事なら今すぐこの女をあの世へ強制送還したかったが、自分が抱えている問題の負担を減らすその提案は棄てるには惜しい。
当方随一の寺院である慶雲院統括最高責任者という役目の重さが、僧侶のプライド――元々あってないようなものだったが――をかなぐり捨てさせた。
『決まりね。あ、報酬は要らないから、浮いた人件費を使ってあの子に義眼を入れてもらえない?
まーったく、あんな綺麗な目を抉らせるなんて、万死に値するわね、あの妖怪――あ、死んだっけ』
「・・・・・・」
クスクスと笑う美女の霊に、背筋を冷たい汗が伝う。
――奴を何が何でも立ち直らせて、この女をとっとと成仏させなければ。
修羅だの羅刹だのと称されてきた物騒な最高僧がある意味僧侶らしい事を考えた、それは稀有な出来事。
どっとはらい。
追記:3/7ということで、多分最遊記界で最も需要が少ないであろう三蔵&花喃姉様話。いえ好きなんですこの組み合わせ。でも『三蔵×花喃』ではないところがミソ(笑)。
本館にてパラレルでもこれと同様の話はありますが、今回は敢えて原作寄りで。
正直置き場所に困ったので、ブログにupすることに。
(長安、『Be There』終盤?)
その女性は、ふわりとした笑みとふわりとした髪で――ふわりと宙に浮いていた。
「・・・・・・迷ってるってんなら、強制送還するぞ」
『あら、私の事見えるの?』
「見えてるから言ってんだろうが」
『驚いた。あの子には見えていないみたいなのに』
「『あの子』?」
『そう。私の双子の弟で、唯一人愛した男性で――ある意味、もう一人の私自身』
「『猪花喃』か・・・『猪悟能』の唯一の肉親だった」
目の前の人物(というか、霊)の正体に、遅ればせながら気付く。
「つーか、『いる』事に気付くことはあっても、『見えた』のはこれが初めてだ」
『そりゃまあ、何でもかんでも見えていたらさぞ大変でしょうよ。
どうもこういうのって波長みたいなのがあるみたいで、霊感のある人でもそれが合わないと見えないらしいのよ』
「・・・ラジオの周波数かよ」
というか、それが合ってしまった自分の不幸を呪いたくなるが、それは横に置いて。
「ったく、あんたが自害なんぞするから、奴は何度でも後を追おうとする。
俺は僧侶であって、救急救命士じゃねぇんだよ」
日毎夜毎繰り返される自傷行為。
最初の頃はその度に医者を呼んでいたが、呼び出しの頻度の高さに閉口した医者から応急処置の方法を伝えられて実行するうち、今では動脈の圧迫止血まで出来るようになった最高僧である。
『・・・仕方なかったのよ。だって私のお腹には・・・』
妖怪に手篭めにされ、植えつけられた呪わしい種。
彼女の信仰する教えでは、たとえどのような経緯があろうと、堕胎は許されない。
もし、あのまま愛する者の元へ戻ったとしたら、
『憎い妖怪の子が私の中で育っていく――それこそ、生きながらの地獄だわ。あの子にとっても、私にとっても』
「だから、自害したと・・・」
『女はね、短い期間であっても綺麗な思い出があればそれに縋っていられる。
でも男は違うわ。
たった一つの汚点が、インクの染みみたいに全てを黒くしてしまう。
私はあの子の中で、美しい思い出だけの存在で在り続けたかったの』
「・・・有り得ねぇ」
『何とでも言えばいいわ。理解してもらいたいとは思わないから。
ただ、やっぱりまだあのまま放っては逝けないのよね、あの子の事』
「見たのか」
どうやって、というのはこの世の理から解き放たれた存在に対しては愚問だろう。
目の前の美人が壁抜けする図を、無理矢理頭から追い払う。
『それにね、貴方も気付くのが遅いのよ。
気温と湿度と気圧の変化で、自傷したくなりそうな頃合が分かりそうなものでしょう?』
「分かるか!」
『それでもお坊さんなの?人の出生と死は気候や月の満ち欠けと関わり合ってるのよ』
「それだけで死ぬのを喰い止められるなら、人口は増える一方だろうが」
というか、何が悲しくて死んだ後の霊と、バイオリズムについて語り合わねばならないのか。
『他人なんてどうでもいいの。私は貴方に、悟能が死なないよう見守っていて欲しいのよ』
「簡単に言ってくれるがな、こっちだって仕事が山と詰まれてるんだ。奴に見張りを付けようにもここの連中ときたら、血を見ただけで腰を抜かしやがる」
『――つまり、いつでも悟能を見張ることが出来て、血を見ても驚かず、冷静かつ速やかに貴方に報告出来る者がいれば、その後の対処がスムーズだと』
「・・・それはその通りだが、何が言いたい」
『いいわ。私が、しばらくあの子の事見張ってる。そして拙いと思ったら貴方を呼ぶわ。
今の私じゃあの子に触れる事は出来ないけど、そこはお願いするわね』
「・・・・・・・・・は?」
『あ、誤解しないで。ずっと娑婆に留まっているつもりはなくてよ。
あの子がある程度私の事に折り合いをつけて、気持ちの整理が出来た辺りでちゃんと成仏するから』
「・・・・・・・・・」
出来る事なら今すぐこの女をあの世へ強制送還したかったが、自分が抱えている問題の負担を減らすその提案は棄てるには惜しい。
当方随一の寺院である慶雲院統括最高責任者という役目の重さが、僧侶のプライド――元々あってないようなものだったが――をかなぐり捨てさせた。
『決まりね。あ、報酬は要らないから、浮いた人件費を使ってあの子に義眼を入れてもらえない?
まーったく、あんな綺麗な目を抉らせるなんて、万死に値するわね、あの妖怪――あ、死んだっけ』
「・・・・・・」
クスクスと笑う美女の霊に、背筋を冷たい汗が伝う。
――奴を何が何でも立ち直らせて、この女をとっとと成仏させなければ。
修羅だの羅刹だのと称されてきた物騒な最高僧がある意味僧侶らしい事を考えた、それは稀有な出来事。
どっとはらい。
追記:3/7ということで、多分最遊記界で最も需要が少ないであろう三蔵&花喃姉様話。いえ好きなんですこの組み合わせ。でも『三蔵×花喃』ではないところがミソ(笑)。
本館にてパラレルでもこれと同様の話はありますが、今回は敢えて原作寄りで。
正直置き場所に困ったので、ブログにupすることに。